明日のビジネスを見据える作業には、過去の確かなデータが不可欠とされているようです。
「いるようです」
この表記からお察しいただけたのであれば、感性のアンテナの感度は、良好かつ高品質。
ここからの記事は、あえてデータや前例など、多くの日本人が好む『裏打ちを約束してくれそうな諸々』を横に置いた、いわば放談です。
成功すなわち巨万もしくはそれに匹敵する富をゲットした、成功者の発想の多くは、凡人(一般人)には突飛(とっぴ)と映りがちです。
話題のYouTuberなど、無料動画配信が急速普及し始めた段階で、一体どれだけの人が着目したことでしょうか?
さらにいち早く実践した人の中から、大衆の心に響く品質の動画を配信した一握りの人だけが、新たなピラミッドの頂点に、一気に駆け上がっています。
「今、これが流行っているから、ならば自分もこれに続こう!」
大衆の中の少数派は、この考え方を世の中の最先端だと思い込み、しかも機を見て敏とはいえないマイペースで、手を出してしまいがちです。
運良くそれなりの成果を得られた、いわゆるラッキーな人も散見されるようですが、大半に関しては、ここで語るまでもありません。
目次
二番煎じでは成功者の背中の手前が関の山
筆者以外にもこの持論に、責任と説得力を確信している人は、少なくないと信じています。
もう1度念を押しておきます。
ここからの話、多くの人にとっては『寝言』『戯(ざれ)言』と響くであること、百も承知です。
鼻で笑いながらサラリと目を通していただき、もう1度じっくりと読み返していただければ、筆者的には「我が意を得たり」です。
リアルタイムでは完全無視だった愚父からの助言(?)
大学時代にスキューバーダイビングのサークルに入っていた、我が唯一の遺伝子継承者すなわち1人息子は、
「実社会に出て何がやりたいのか、正直まだわからないけど、とりあえず誰よりも早く、そして多くの内定を得るのが目標」
大学3年生当時の彼の目には、人生を遊び過ぎていると映っていたらしい、父親すなわち筆者は完全無視で、母親にはこんなふうに語っていたようでした。
ちなみにそんな彼は、幼い頃から習字を続けていて、小学校卒業時点で、毛筆硬筆それぞれ十段を取得していました。
書道の師範からも素質を見込まれていたらしく、書家の道も選択肢のひとつだと勧められるも、
「そんなバカ親父みたいな人生など論外!好成績で高学歴から安定企業に就職して、堅実な勝ち組になるんだ!」
これはこれで、彼にとっての反抗期未満だと、筆者はお手並み拝見の姿勢でした。
そんな彼が二十歳を迎え、ようやく大手を振って飲酒できる環境が整い、父子で酌み交わした時の話です。
「これからは機械や技術ではなく、人間でなければできない特殊技能こそが、飯の種になる時代だと思うぞ」
目の前のうんざりした表情を確かめつつ、それでも構わず続けました。
「オマエの書道の腕と水泳の技術があれば、イルカの調教師兼エンターテナーで、イルカに乗って太い筆で書道の実演とか、ウケること間違いないぞ!?」
隣席に座っていた女性たちは、筆者の話に耳をそばだててくれていましたが、この時の彼の反応は、ご想像通りの……
その後金融関係の上場企業に就職するも、両親の残酷かつ冷静な予想通り、1年と持たずにドロップアウト。
「完全に人間が変わっていたというか、自身を見失っていたから、これは挫折というよりも、天が与えてくれた軌道修正だろうな」
深夜のラーメン屋のワンオペバイトの最中、反社の人から切りつけられた傷を、左上腕部に刻んでの再就職活動は、容易ではなかったようでした。
その後大学時代のOBが立ち上げた、いわゆるベンチャー企業の卵に合流から、
「描いた夢と生きる現実が違い過ぎるけど、今の方が各段に楽しいよ」
ようやく体内に眠っていた、あれだけ拒絶した父親のDNAが顔を覗かせ始めたらしく、人材派遣業務の支部長のポストを任されたようでした。
かつて望んだスピード出世、所属する組織の規模こそ希望には遠く及ばずとも、この時期彼の中の価値観は、日々激変を見せていたことでしょう。
ところが凪(なぎ)の季節が続いてくれないのが、経済社会です。
2020年新春早々、全世界を襲った想定外の現実を前に、人材派遣業なる営利目的事業が一体どうなったかは、あらためて語るまでもないでしょう。
元代表の熱望で愚父がワンポイント参画!?
「親父と社長だけは合わせられない。意気投合でもされようものなら、核融合からメチャメチャになってしまう」
息子が真顔で語る、我が子を拾ってくださった恩人との初対面は、思わぬ形で叶うこととなりました。
詳細は伏せますが、世の中は狭いものだと、この年齢になって再認識させられました。
共通の知人を介し、一気に意気投合ならぬ、愚息の比喩表現を借りれば、これぞ核融合。
「このまま人材派遣にしがみついていては、社員を路頭に迷わせてしまう。サクサクと新たな分野に挑めるのがベンチャー企業の長所だから、直ぐに仕掛けたい」
仲介者の配慮もあり、よもや筆者が、自身が拾って片腕に選んだ、同じ苗字の社員の父親とは気づかぬ若き社長は、やはりタダ者ではありませんでした。
ころがここにきて、社長の冒険的舵取りに対し、社員の大半から反対意見が上がり、双方の間に大きな溝が生じていたのです。
筆者の息子を始め、社長の脇を固めるナンバーツー以下は、いずれもが堅実慎重派。
彼らからすれば危なっかしくて理解に窮する、社長のフライング疾走を制御することで、ベンチャー企業は順調な成長を続けていたのでしょう。
そんな多数派が社長に進言したのが、IT関連分野への進出だったと聞いて、筆者も首を傾げつつ、表情を曇らせました。
「コロナ禍や無料動画配信の人気急騰など、今後さらにIT分野はニーズが高まるし、一足早く参入した企業も好調らしい。だから自分たちもそれに続こう!」
これでは生き残れないどころか、力尽きる時期を早めるばかりだと、孤軍奮闘ならぬ独り説得を続けるも、企業である以上は多勢に無勢。
さらに年功序列や独裁主義とは無縁のベンチャー企業、社長は自らが身を退く決意を、この時すでに固めていたようでした。
二番煎じでは成功者の背中の手前が関の山
序章で述べた筆者のこの価値観に、大いに同意くださった社長からは、
「残った社員たちでは、インパクトのある自社サイトの配信すら怪しい。自分が身を退き会社を譲渡する交換条件として、(筆者に)アドバイザーを務めてもらえませんか?」
企業経営に関しては一切実績のない、自身の父親世代の筆者に、自分と相通じる『ニオイ』を感じてくださったのでしょうか、このように申し出てくださいました。
これ以上は正体を隠し通せないな。
大声を張り上げての酒宴など論外のこの時期、そこからは魔訶不思議な、そして静かに熱い酌み交わしの時間が、こっそりと日付をまたいでいました。
「こちらの身辺が綺麗になったら、いかがですか?譲渡する私の会社ではなく、放り出される私と組んで、何かビジネスを始めてはいただけませんか?」
やはりそう来たか!?……ニヤリとしつつも、これは筆者の望む展開ではありませんでした。
「いえいえ。社長とは年齢その他を取っ払って、ぜひ友人としてお付き合いいただきたい。友だちとの間に金銭や仕事が絡んだら、その先に待つのは……」
最終的に当初の社長の希望だった、筆者が自身の息子を含めた社員一同に対し、1度だけ訓示(助言)らしきものを申し述べることで双方合意から、固く握手となりました。
筆者の息子にすれば、核融合どころか銀河系ビッグバン級のドッキリ仕掛けが、こうして整ってしまうのも、ビジネスシーンの奇跡未満?
ドッキリカメラの隠し撮りなのかと、視線が落ち着かない息子の動揺が、可笑しくも可哀想にも思える、残る若者たちとの最初で最後の初対面でした。
まもなく前社長となる、去り行く若者の隣には、明らかに場違いな筆者が立っているとなれば、それも当然でした。
二番煎じでは成功者の背中の手前が関の山。
さらにこれからは、機械がどれだけ進化しようとも、人間でなければお金が頂戴できるレベルの仕事にならないジャンルこそが、生き残りの鍵
そして新社長が公式サイトにアップしている、会社代表としての挨拶文を拝読しての、筆者からの率直な評論も。
一刀両断で申し訳ないけれど、ダラダラと時系列を追って長いばかりで、心の琴線が全然揺れない。
ヘタクソで退屈な、披露宴のスピーチみたいだ。
誰もアナタのファンではなく、これからファンになってくれる可能性のある、より多くの人の目を惹かなければ、意味がないでしょ?
会社の自己紹介なのだから、ここでは結論ファースト!
「新たな代表者である私は〇〇と考えます!その理由は△△だからです!」
前社長のそれと読み比べれば、グリップ力の違いは一目瞭然……どうかな?
新社長を自身の目の前で公開処刑同然に斬り刻む、核融合コンビの片方は実父。
昭和のテレビドラマの設定でも、おそらく稀有であろうシチュエーション。
筆者はさて置き、この理解不能な時間と空間こそが、去っていく社長からの愛と激励の鞭(むち)であることを、はたして愚息は気づいていたのでしょうか?
それよりも俄に思い出せず、今、内心焦っています。